戦後フランスで最高の人気を誇るスターだったジェラール・フィリップは、1956年11月25日、36歳の若さで亡くなりました。約30本の映画に出演し、また多くの舞台に立ち、映画史そして演劇史に不滅の足跡を残しました。
2022年はジェラール・フィリップの生誕100年の年に当たり、日本では映画配給会社セテラ・インターナショナルがジェラール・フィリップ回顧上映を計画しており、それにあわせるかたちで『ル・シッド 最後の冬』(Le Dernier Hiver du Cid, Gallimard, 2019)が刊行されました。
本書はフランスで大きな反響を呼び、2020年ドゥー・マゴ賞という権威ある賞を受けています。著者のジェローム・ガルサンはジェラール・フィリップの娘アンヌ=マリー・フィリップの配偶者というだけでなく、フランス文学界でも重要な評論家、筆者、編集者としても活躍しています。時事評論週刊誌『ル・ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール』の文化面での責任編集者を長年務め、多くの書籍を出版しています。
ジェラール・フィリップは、終戦後のフランスで最高の人気を誇るスターでしたが、病魔に襲われていました。肝臓癌が見つかると病院に移りますが、自宅に戻って5日後に死去。本書はジェラール・フィリップの最後の4か月を辿ったもので、悲痛ながら静かな感動を呼ぶことでしょう。
『ル・シッド 最後の冬』
ジェローム・ガルサン著/深田孝太朗訳/中央公論新社